2013年08月21日

問題提起 「安倍晋三は高橋是清を超えられるか」 - 林川眞善

 今回は問題提起として、林川眞善氏の論考「 -高橋財政とアベノミクス- 安倍晋三は高橋是清を超えられるか」の「はじめに」の部分を引用させて頂いた。林川論考の全文は、日本シンクタンクアカデミーのホームページ(本文の一番下に示したURL)にアクセスしてご覧下さい。

はじめに  安倍晋三を勇気づける先人

今から80年前の昭和初期、当時デフレ下にあった日本経済を積極財政の展開を通じ、つまりリフレ政策でデフレからの脱却を果たした政治家がいた。その名は'高橋是清'、総理大臣、6回の大蔵大臣を経験した政治家だ。

その彼は'事態'の経過と共に、軍靴の音、高まる環境にあって、財政規律の確保を図るべく膨張する軍事費の削減に必死に取り組んだのです。そして、その結果は軍部の不興を買い、ついには青年将校らが決起した反乱(2・26事件)に遭遇し、一命を落とすことになったことは周知の処。しかし、それ以上に、デフレからの脱却を果たした'時の蔵相'高橋是清は、信念に徹した政治家としてその名を残す処となっている。

さて、アベノミクスを介して日本経済の再生を目指す安倍首相の政策行動は、これまで、高橋是清のそれに倣うがごときであり、時に、安倍自身、「高橋は私を勇気づけてやまない先人」と、コメントしてやむことがない。では、安倍晋三は'高橋’を学び、また'平成の高橋是清'になろうと言うものか。

そこで、R.J.スメサースト著「高橋是清:日本のケインズ-その生涯と思想」(東洋経済新報社、2011年)をベースに、当時、'「金解禁」の停止'、'積極財政の導入'で脱デフレに成功した(1)高橋是清の世界をレビューし、併せて、是清の思考様式、行動様式に照らしつつ、(2)'アベノミクスの可能性'、とりわけアベノミクスで目指す成長戦略の可能性につき考察する。

本論考の全文は以下のサイトでご覧頂けます。
http://www.npo-jtta.jp/pdf/report1308.pdf


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2013年07月12日

これまで手をつけられなかったところに手をつけよ - 高橋琢磨

The recent up-and-down in the Nikkei Stock Average was probably a warning to investors who had become overconfident because of the quick impact of the so-called "Abenomics," which was designed to revitalize the sluggish Japanese economy. Abenomics is the name given to the policy mix of three arrows: extra-ordinary easy monetary policy, government spending, and a growth strategy, or structural reforms, to boost Japan’s competitiveness.
Some LDP members explain that the goal of Abenomics is to emulate the economy of Germany, whose growth rate is the highest among the industrial countries. It is true that by the early spring of 2013, the measures resulted in a dramatic weakening of the yen and a handsome rise in the Nikkei Stock Average. However, the Japanese yen is doomed to be decided by the markets, while the hypothetical German mark has been fixed to other the Eurozone members. Alternatively, Abenomics may be compared to the bold policy measures taken by New Zealand in late 1980s. While the latter addressed an acute loss of population, the former addresses the slow progression of population shrinkage. However, the structural reform programs in New Zealand were radical, whereas those by Abe are not. In this sense, markets are probably demanding more radical programs. Thus, the markets are adjusting to the excessive euphoria.
One of Abenomics’ goals is to achieve an inflation rate of 2% in two years to symbolize an end to the Japanese depression. If inflation expectation hits 2%, we may logically observe 4% bond yields, assuming 2% inflation expectation plus 2% risk premium. This would be a very different scene from the current bonds markets. If the government succeeds with Abenomics, Japanese banks, which have large holdings of government bonds of low yields, will have to sell their holdings before interest rates raise. However, it will be difficult to judge when and how. Anxiety mounted in late May when there were expectations that the United States QE2 program was about to end and that the Chinese economy was about to stagnate at the same time. As a result, Japanese banks sold their government bonds. However, the bond market does not seem to have changed significantly, nor is inflation expected.

This episode reminds us of the long-time declines and hikes in bond yields of Great Britain in the late 19th century. At that time, the global economy was under the strong influence of the excess capacity of the US and German economies, which had achieved innovations in such areas as the steel, chemical and electric industries. This historical experience, in turn, suggests that the current global economy is under the strong influences of the excess capacity of the Chinese economy and U.S. monetary policy, given that the yen-dollar rate is hovering around 100 yen.
Among intellectuals, some may insist that Japan’s "Lost Two Decades" (ushinawareta nijuunen) were not a lost time, but simply a time of adjustment necessary to achieve a sustainable economy. However, Japan’s economic decline took on a new reality in Japan when China elbowed Japan aside in 2010 to become the world’s second largest economy. Excessively easy monetary policies in the U.S.A. and Eurozone may have pushed Japan’s policy makers to follow suit. Fortunately or unfortunately, Japan adopted Abenomics. In order to avoid becoming a victim of hedge funds, Japan has to accomplish the complete version of Abenomics. I would like to take this opportunity to urge you to provide new ideas for a growth strategy and fiscal reforms.
posted by jtta at 18:05| Comment(3) | 日記 | 更新情報をチェックする

2013年07月06日

アベノミクス検証のポイント - 松井幹雄

1・基本的な視点
①「アベノミクスは成功するか」といったテーマの対談や論文が最近目につきます。この発想、そして問題のとらえ方は、日本独特のものであり、これまでもいろいろな場面で登場しています。
アベノミクスとは何か―目標、その達成手段は何であるか。どんな条件を満たせば達成できた、といえるのか。こういう議論をキチンとしないまま、アベノミクスに関するさまざまな「既成事実」が次々に繰り出してきます。しかし、この「既成事実」なるもの、例えば、新聞が一喜一憂する株式市場の動向は、確かに一つの関連する現象ではあるけれども、それは「アベノミクス」の何とどう関係するのかはっきりしません。
さらに、この「既成事実」とは何でしょうか。「すでに起こってしまったこと」で、それは受け入れざるを得ない「事実」なのでしょうか。あるいは「生じつつある現象」であり、これからさらに「変化していく現象」として理解すべきなのでしょうか。何が「事実」かということも実は簡単にいえないことを理解すべきです。

②今まで何回となく「日本経済の再生戦略」が策定されました。それらが成功しなかった、あるいは失敗した理由は何でしょうか。そして、アベノミクスは従来の再生戦略と、何がどう違うのでしょうか。
例えば、「規制緩和」です。このテーマは1980年代から日本経済の最重要課題として、繰り返し登場しました。そしてアベノミクスでも重要な戦略として位置づけられているのです。しかし、1980-90年代には、日本経済の高コスト構造の原因とされ、世界的な価格水準に至る「価格破壊」の手段として規制緩和が必要だという見解でした。ところが、アベノミクスでは、デフレを収束させるリフレ対策として、つまり180度異なる位置づけになっているのです。

2・意思決定プロセスの再検討
①アベノミクスの実施組織、マネジメントの問題です。内閣府、省庁、閣僚とそれぞれの組織に様々な「会議」、「委員会」が設置されています。この態勢は、これまでとどう違うのでしょうか。過去の反省、教訓がどのように今回の体制のなかに取り込まれているのか、明らかにされていません。また、アベノミクスに取り組むマネジメントの原則、ともいうべきものが提示され、徹底されていることもないようです。再生の戦略をうまく実施していくマネジメント能力について、ここでは詳しく触れることはできませんが、解体と創造といういわば二律背反の事象を同時に進める、短期と中期目標の同時追求など、成長戦略と比べても非常に難しく高度のレベルが要求されます。
これまでの再生戦略では、リーダーシップの不在、問題の先送り、両論併記、前例踏襲、全員一致慣行の墨守などが指摘され、体制が機能不全に陥りました。この教訓は、どのように解決され、新体制のなかに生かされているのでしょうか。

②さらに、「戦略の策定」と「戦略の実行」は切り離すことができるのでしょうか。戦略の教科書を引き合いに出すまでもなく、戦略をプロセスと捉え、「創発」、「学習」といった概念を重視するようになっています。これらの概念は、官僚制組織には馴染まないのですが、多分アベノミクスの成否を左右するカギ概念だと思われます。例えば、過去二十年の日銀のデフレ対策、金融緩和策の特徴は、まさに官僚制組織の限界を示しているといえるでしょう。最も官僚的な組織といわれる日銀にとって、対応できない問題は「存在しない」のです。

3・アベノミクスの歴史的な意義
①1920-30年代の大恐慌が歴史的な大転換期だったことは確かです。この取り組みのなかから、金本位制とレセフェール経済学に代り、ケインズ経済学が登場しました。ニューディール、福祉国家、中央計画社会主義などの新しい国家像が登場しました。つまり資本主義はこうした「対抗理念」を自らの内部に組み入れながら、大恐慌を克服し市場経済として生命力を維持してきたといえます。

②今回のアベノミクスも、まさにこのような歴史的な大転換のなかにあるという見方ができるでしょう。つまり、レセフェールの新古典派経済学に代る新たな経済学の登場という可能性を秘めている、国家組織の改編につながる、など「イノベーション」という問題意識がアベノミクス成功の鍵になるかもしれません。
posted by jtta at 08:01| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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