2013年07月06日

アベノミクス検証のポイント - 松井幹雄

1・基本的な視点
①「アベノミクスは成功するか」といったテーマの対談や論文が最近目につきます。この発想、そして問題のとらえ方は、日本独特のものであり、これまでもいろいろな場面で登場しています。
アベノミクスとは何か―目標、その達成手段は何であるか。どんな条件を満たせば達成できた、といえるのか。こういう議論をキチンとしないまま、アベノミクスに関するさまざまな「既成事実」が次々に繰り出してきます。しかし、この「既成事実」なるもの、例えば、新聞が一喜一憂する株式市場の動向は、確かに一つの関連する現象ではあるけれども、それは「アベノミクス」の何とどう関係するのかはっきりしません。
さらに、この「既成事実」とは何でしょうか。「すでに起こってしまったこと」で、それは受け入れざるを得ない「事実」なのでしょうか。あるいは「生じつつある現象」であり、これからさらに「変化していく現象」として理解すべきなのでしょうか。何が「事実」かということも実は簡単にいえないことを理解すべきです。

②今まで何回となく「日本経済の再生戦略」が策定されました。それらが成功しなかった、あるいは失敗した理由は何でしょうか。そして、アベノミクスは従来の再生戦略と、何がどう違うのでしょうか。
例えば、「規制緩和」です。このテーマは1980年代から日本経済の最重要課題として、繰り返し登場しました。そしてアベノミクスでも重要な戦略として位置づけられているのです。しかし、1980-90年代には、日本経済の高コスト構造の原因とされ、世界的な価格水準に至る「価格破壊」の手段として規制緩和が必要だという見解でした。ところが、アベノミクスでは、デフレを収束させるリフレ対策として、つまり180度異なる位置づけになっているのです。

2・意思決定プロセスの再検討
①アベノミクスの実施組織、マネジメントの問題です。内閣府、省庁、閣僚とそれぞれの組織に様々な「会議」、「委員会」が設置されています。この態勢は、これまでとどう違うのでしょうか。過去の反省、教訓がどのように今回の体制のなかに取り込まれているのか、明らかにされていません。また、アベノミクスに取り組むマネジメントの原則、ともいうべきものが提示され、徹底されていることもないようです。再生の戦略をうまく実施していくマネジメント能力について、ここでは詳しく触れることはできませんが、解体と創造といういわば二律背反の事象を同時に進める、短期と中期目標の同時追求など、成長戦略と比べても非常に難しく高度のレベルが要求されます。
これまでの再生戦略では、リーダーシップの不在、問題の先送り、両論併記、前例踏襲、全員一致慣行の墨守などが指摘され、体制が機能不全に陥りました。この教訓は、どのように解決され、新体制のなかに生かされているのでしょうか。

②さらに、「戦略の策定」と「戦略の実行」は切り離すことができるのでしょうか。戦略の教科書を引き合いに出すまでもなく、戦略をプロセスと捉え、「創発」、「学習」といった概念を重視するようになっています。これらの概念は、官僚制組織には馴染まないのですが、多分アベノミクスの成否を左右するカギ概念だと思われます。例えば、過去二十年の日銀のデフレ対策、金融緩和策の特徴は、まさに官僚制組織の限界を示しているといえるでしょう。最も官僚的な組織といわれる日銀にとって、対応できない問題は「存在しない」のです。

3・アベノミクスの歴史的な意義
①1920-30年代の大恐慌が歴史的な大転換期だったことは確かです。この取り組みのなかから、金本位制とレセフェール経済学に代り、ケインズ経済学が登場しました。ニューディール、福祉国家、中央計画社会主義などの新しい国家像が登場しました。つまり資本主義はこうした「対抗理念」を自らの内部に組み入れながら、大恐慌を克服し市場経済として生命力を維持してきたといえます。

②今回のアベノミクスも、まさにこのような歴史的な大転換のなかにあるという見方ができるでしょう。つまり、レセフェールの新古典派経済学に代る新たな経済学の登場という可能性を秘めている、国家組織の改編につながる、など「イノベーション」という問題意識がアベノミクス成功の鍵になるかもしれません。


posted by jtta at 08:01| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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